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2009/04/29

これからの音楽市場のあり方

先日、音楽プレーヤー「Muziic」というツールを紹介しました。
ご存知の方もおられると思いますが、私の本業は音楽家であり
音楽関連事業を主な生業としています。

前回ご紹介したMuziicに限らず、現在Youtube他、様々な動画サイトやファイル共有
などで大量の音楽PVやライブ映像が毎日のようにアップロードされ、
誰でも簡単に観覧する事が出来ます。
この事態に対し、著作権の保護を求めてJASRACをはじめとする様々な著作権団体
や企業が対策に乗り出しております。

その点について、私も本来ならば勝手に配信されている音楽に対して反対の立場
を取ってしかるべきであり、事態を助長するツールの紹介なんてもっての他、
のはずなんですよね(笑)
しかし、私の場合、意識は全く逆で、このような事態は大歓迎なわけであります。

理由としてはいくつかあります。

まず、ここまで音楽コンテンツの違法アップロード、ダウンロードが一般化した今、
よっぽどガチガチな対策を行わない限り完全に規制するのはまず無理です。
現在アップロードされている音楽コンテンツを削除したところで、
次から次にアップロードされ、結局はいたちごっこでキリがないでしょう。

そもそも、ADSLや光回線などの需要、普及に一役どころか二役も三役も
買ったのは他でもないYoutubeをはじめとするこれら動画サイトであり、
その中でも音楽コンテンツはメインとも言える重要コンテンツなわけで。
経済効果としても相当の恩恵を受けた上、広告効果などの二次的三次的
な利益もあったはずです。それもこれも、音楽コンテンツやドラマなどの
コンテンツを気軽に観覧出来ることにメリットを感じたユーザがいたからこそ。
そこに著作権侵害に対する悪意もなければ保護に対する善意もなく、
ただサービスとして利用し、そのサービスをより快適にするためにより高速な
回線の需要が増加し、供給に拍車がかかったのではないでしょうか。

著作権どうこうは、所詮作り手と市場関係者が利権を守るために騒いでいる
に過ぎず、サービスを受ける側にとってはタダに越した事はないわけで。
もちろん、民法、という観点で見ると守らなければならないのは当たり前の
話ですし、理解もしているのは大前提なんですが、なんというか、需要と供給
が一段落してから騒ぎ出すのもどうかとも思うんですね。

自分のように、音楽を発信する側としての立場にいるとよく解るんですが、
「無料で音楽や動画を公開する」という事でのメリットも多大なものがあるわけです。

そのアーティストを知らなかった人がYoutubeで見たのをきっかけにファンに
なってライブを見に来てくれたりCDを買ってくれたり。
それはインディーズでもメジャーでも同じであり、同じく恩恵はあったはずです。
そもそも、たかがFLVで再生される圧縮された動画や音源などCDの音圧に
かなうはずもなく、エンジニアの自分に言わせれば別物なわけです。

つまり、無断でアップロードされていようとなんだろうと、WEB動画はWEB動画、
CDはCD、本当にファンなら、本当に良い音楽なら、CDは買いますよね。
むしろ、Youtubeで聴いて、良いと思って買う、なんて事はざらにあると思います。
Youtubeを聴いて、それで満足されるのは、そこまでの魅力しかない音楽。
最近はCDが売れなくなった、それもこれも動画サイトや違法着うたサイトに
アップロードされているからだ、なんて業界人やメディアは言いますが、
違います。お金を出すに値する音楽がないからです。
特にここ数年の、特に日本の音楽は本当に質が低い。

そんなこんなで、業界側も著作権だ課金だと言う前に、もっと良い音楽を、
買うに値するクオリティの作品を出すべきだし、どうせすぐには止まらない流れで
あるなら、逆にプロモーションに利用すればいいし、CDを作る→売る、に固執
するのは今やナンセンスだと思うのです。

私が常々思っているのは。
ファンやお客様はアーティストにとってパトロンであるという事。
音楽をやっていくのはお金がかかります。
ライブはもちろん、CDを作ってパッケージして、市場展開して、何をするにも
当たり前にお金がかかります。

そのお金はどこから出ているか? そう、ファンやお客さんからですよね。
つまり、本来の相互関係性としては、「新しい作品を作ったから販売する」、
なんてのは思い上がりで、「新しい作品を作る為に買ってもらう」、なわけです。

そしてそれなら、極端に言えばお金の回収手段が売り上げじゃなくても、
ただの現金でもいいわけです。

そこでいつも私が行き当たるのが「音楽ファンド」なわけで。
ファンは好きなアーティストを応援する、より素晴らしい作品を作るための
資金と時間を提供する、という名目の元、アーティストに投資すればどうでしょうか。
例えば年間一口5万円程度の投資が100人分集まれば、年間500万円。
それだけあれば、アーティストは一年間丸まる音楽に打ち込め、制限なく音源製作
にも取り組めるでしょう。そして、日々のバイトや販売活動に追われる事もなく、
よっぽど質の高い作品が作れるはずです。

そして、その見返りとして投資者はより質の高いライブやリリースされた音源を
手に入れる事が出来、有名になってさらに多くのファンを得るというアーティストの
目標に向けた過程や結果に携わる事も、ファンならではの喜びとなるのではないか。

もちろん、販売する、という縛りが無くなれば
動画サイトだろうがなんだろうが、逆に個人投資家=ファンへ向けた
プロモーションとして公開するのに何のデメリットもないわけで。


あくまでも、時代性に対する一つの例案ではあるけども、
鬼の首を取ったように著作権を盾にするのではなく、結局言いたい事は、
状況に応じてもっと建設的に考えろよ、って事なんです(笑)

そんなこんなで私は、技術の進歩が生んだ恩恵はありがたくお受けします。
それはそれ、これはこれ、ってね。

長くなりましたが、これからも自分が気に入ったツールは堂々と紹介します(笑)


4 コメント:

匿名 さんのコメント...

ムダに長い。少なくとも半分の量で、だからこそもっとわかりやすく書けるんじゃない?

ShiNO さんのコメント...

確かに長いですね^^;
ただ、無駄かどうか、短いから伝わりやすい、というのは自分のスタイルからすると少し短絡的な気はします。
それならば書籍は必要ないですからね。
本筋だけを伝えれば済む内容と、本筋を伝えるために外堀が必要な内容とはテーマによって違うし、一つのテーマでも伝えたい事は一つとは限らないので。
でも、極力短くまとめるようにはもっと意識していきます。ご意見ありがとうございましたm(_ _)m

って、コメントも長いですね(笑)

匿名 さんのコメント...

音楽ファンド、良質なアーティストと、そしてここが難しいですが良質なファン、の両方が揃った上でなら、間違いなくいいシステムだと思います。

ただ難しいのは、その両方が揃う土台がなかなかない、という時代背景ではないでしょうか。

しかしながら、成立するなら、素晴らしい考えだと思わされました。

darake さんのコメント...

音楽ファンド、良いですね。
いつだったかレディオヘッドがドネーションの形で楽曲配信したときに、実比率の3%が集まったという話を聞きました。
何人集まり、何人払うか。損益分岐点をどう設定するのか。
出版コストのローコストが進んでいて、100人のコアなファンがいれば生活に困らないと豪語している方の話も聞いたことがあります。
なんにしても建設的であることは当然ですが、いろんな音楽家の生活スタイルがあるということを考えなければならないし、補償金うんぬんの話にしても消費者であるファンを立脚点にしなきゃなんないかなと思います。
この先どうなんのかな〜。